ブッダ物語●祇園精舎(2)

 現れたスダッタの印象は、想像とまるで違っていた。さわやかな笑みを湛えて彼は、礼儀正しくこう言った。
「太子さま。ぶしつけにも突然お伺いいたしましたこと、お詫び申し上げます。実は今日は、太子さまが郊外に所有なさっている土地をお譲りいただけないものかとお願いに上がったのです」
 いきなりの申し出に真意を量りかね、まず断りの言葉が口を突く。すると彼は、いよいよ表情を崩してこう続けた。

「大事な土地であることは重々承知いたしております。しかし、これには訳がございます。ぜひそれを知っていただきたいのです」
 何か温かな、深みのあるものを感じさせる。”今までの輩とは少し違う。聞いてみようか”と心が動いた。
「実は先日、私は最高の覚者であるブッダ・釈迦牟尼にお会いすることができました。世尊は各地で、すべての人が本当の幸せになれる教えを説いておられます。私は多くの人に仏の教えを伝えたいと思い、釈尊にコーサラへお越しいただくよう、お願いしました。そこで、あの土地にブッダが説法される精舎を建立したいのです」

“ブッダについては、私も以前に聞いたことがある。だがそれほど尊い方のためとはいえ、ただ話を聞くために、あんな広大な土地が必要なのか。それに、コーサラにも優れた婆羅門はいるのだから、他国からわざわざ覚者を招かずとも、それらの修行者や人師を、手厚く保護していけばいいのでは……”
(つづく)

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