ブッダ物語(玉耶の仏縁)(3)

 祇園精舎の建立で知られる給孤独長者は、長男の妻・玉耶の生活態度に悩んでいた。美貌だがわがままで、家族に溶け込まない彼女の心掛けを正すため、給孤独はブッダにご説法をお願いする。だが玉耶は、自身の矯正計画と知り、すねて部屋に引きこもってしまう。

 玄関の辺りが騒がしい。出家たちの行列が、どうやら見えてきたようだ。家人が口々に、何かはやし立てている。家の中は、大方の準備が終わったのだろう。時折、だれかが廊下を駆け抜ける以外は、咳払い一つ聞こえなかった。

 総出の迎えが盛り上がるほど、部屋の静寂が際立つ。押し入れに身を潜める玉耶は、より小さくなってうずくまった。フッと醒めた思いが胸をかすめる。
“何で私、こんなことしてるの?”。いかにも幼稚だと、我ながら思う。だが、”姿さえ見せなければ”。今はそう思ってやり過ごすしかなかった。

 ブッダの一行が到着した。家中が玉耶のことなど忘れたように、修行者たちの世話を始める。屋敷の至るところで談笑が交わされ、愉快な声が響きわたる。だが、にぎわいの中ただ一人、家長の長者だけが、ハラハラしながら嫁の行方を捜していた。
“お出迎えもするつもりがないのか……”。玉耶の部屋へ行ってみた。
「玉耶よ、いるのか」
 返事がない。確かにいるだろう。だが、呼びかけを拒むように静まり返っている。”ヤレヤレ、困ったものだ”とため息をつきながら、ブッダの控室に行き、事情を説明した。
「まことに申し訳ございません。実は……」
 一切をお見通しであったブッダは、すぐに神通力で、長者の屋敷を透き通るガラスの家に変えてしまわれたのである。
(つづく)

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